2025年

9月中旬に札幌で開催された日本鳥学会で、2020年、2025年に開催された行動計画づくりワークショップの参加メンバーが自由集会を開催し、現状や様々な取り組みを報告しました。IBOからも、この春から開始した独自の域外保全の取り組みなどを紹介するとともに、アカガシラカラスバトで実践、実感してきた、生息地保全、域外保全(飼育繁殖)、地域のとりくみが越境し、協働してはじめて、絶滅危惧種を回復させることが出来る、というお話をしました。また、小笠原から失ってしまったかもしれないオガサワラシジミのこともお話しました。さまざまな自然・生物系の学会で、多くの絶滅危惧種の研究が行われています。しかし、現場で絶滅の危機に対峙して、我が事としてこれに取り組んでいる人や、保全の実像を身をもって知る人は決して多くないと感じます。そんな中で、40名近くが参加してくださったことは嬉しいことでもあり、また、過去にアカガシラカラスバトやアホウドリなどの保全で小笠原に関わってきた研究者や、かつての行政官が集ってくれたことも心強いことでした。

日本鳥学会2025 自由集会 オガサワラカワラヒワ絶滅阻止限界点への挑戦

川口大朗(Islands care)、南波興之(日林協)、鈴木 創(i-Bo)&高橋幸裕(上野動)、川上和人(森林総研)

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2021年夏に東京都事業として開始されたオガサワラヒワの域外保全(飼育下繁殖の取り組み)。IBOでは、同事業を受託して4年間取り組んできました。2025年春にはIBO独自でも飼育舎を設置して、域外保全の加速を目指してきました。取り組み開始から5年目を迎えた2025年6月に、オガサワラカワラヒワはじめてのヒナが誕生し、無事巣立ちに成功しました。父島の東京都施設及び、上野動物園でもつぎつぎに巣立ちに成功、オガサワラカワラヒワの巣立ち鳥は6羽となりました。絶滅回避への小さな1歩ながら、大きな踏み出しとなりました。その成果について、東京都、環境省と同時にプレス発表しました。

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2020年5月、オガサワラカワラヒワChloris kittlitziは小笠原固有種であることがわかりました(このコーナーでは愛称オガヒワを使用します)。それまでは、本土にも生息するカワラヒワの亜種とされていましたが、推定106万年前の大昔にアオカワラヒワから分岐して、独自の歴史をたどり、世界で小笠原諸島にしかいない鳥になりました。この鳥のかけがえのなさと同時に、目前に迫る絶滅の危機が明らかになりました*1。かつて、小笠原の島々に広く分布し、乾性低木林の色模様を一身に集めたような緑の小鳥は、母島列島と南硫黄島のみに生息するまでに減少し、消え去ろうとしていました。小笠原自然文化研究所(通称:IBO(アイボ))では、一般社団法人Islands care*2とともに「オガサワラカワラヒワ保全計画づくりワークショップ」*3を2回開催し(2020年12月、2025年1月)、絶滅回避のための行動計画を提案してきました*4。また、2021年からは東京都の域外保全事業を受託して、前例のないオガヒワの飼育に取り組み始めました。さらに、2025年春からは、「繁殖ペア数を増加させる」ために、研究所独自に飼育舎をつくり、東京都から2羽を譲り受け、環境省保護増殖事業の一環としてIBO独自に域外保全を開始しました。このコーナーでは、IBOが独自に取り組むオガヒワ域外保全チャレンジのトピックや、オガヒワのお話などを紹介していきます。

*1:オガサワラカワラヒワ絶滅阻止限界点への挑戦. https://ogasawara-kawarahiwa.jimdofree.com

*2:小笠原諸島をフィールドとして、自然環境保全に取り組む団体です。中でも絶滅が危惧されるオガサワラカワラヒワの調査や生息環境保全のため、様々なプロジェクトを行っています。https://www.islandscare.org

*3:特集 オガサワラカワラヒワ保全計画づくりワークショップ(2021). 小笠原研究 48.

https://tokyo-metro-u.repo.nii.ac.jp/search?page=1&size=20&sort=custom_sort&search_type=2&q=1701390176003

*4:オガヒワ未来作戦レポート〜ワークショップだョ 全員集合〜. 小笠原くざいもんチャンネル(公式)https://www.youtube.com/watch?v=unlN45FSmCw