研究所設立の目的

設立趣意と目的
 「小笠原に小笠原の博物館をつくること」が、私達の願いです。 小笠原には、亜熱帯海洋島独特の自然環境と、特色ある世界交流の歴史文化があります。 小笠原の自然と歴史、文化は、私たちが大切に守り、未来に引き継ぐべき遺産です。 カメそれらを学び理解していくために、研究者たちが中心となって、平成12年5月、小笠原の地に「小笠原自然文化研究所」を設立しました。ここは、最新の情報に基づき、小笠原について島内外の人々が学べる開かれた機関です。 私たちの目的は、小笠原の自然環境と歴史文化の情報収集および発信を行うこと、また調査研究結果をもとに自然環境と歴史文化の保全と持続的利用に寄与すること、そして小笠原に博物館を設立するための準備を行うことです。


研究所設立の背景 小笠原の 過去・・現在・・未来・・そして・・
行方不明の小笠原の過去の断片達・・・
 太平洋上に浮かぶ小笠原の島々は、六千万年前の海底火山の隆起により誕生しました。その後、気の遠くなる長い年月をかけて育まれ、今に至っています。 一方、島に暮らす人の歴史は百年余で、島自身の歴史と比べれば始まったばかりといえます。しかし、様々な地域の人が移り住み、また激しい時代の波に洗われてきた小笠原には、その中で育った独特の文化・習慣といったものが確かに存在します。 カヌー このような成り立ちを持つ小笠原は、古今を問わず多くの人々の強い関心を集めてきました。 しかし、そのほとんどが島の外から小笠原を見つめるものでした。ある時は領土・資源的関心であったり、またある時は純粋に研究者の未知のフィールドへの関心であったりしましたが、訪れた多くの人々とともに島外に持ち帰られたそれらの成果 は、ここ小笠原自身で実を結ぶことはほとんどありませんでした。 それら個々の記録や知識や標本たちは、いわば行方不明の小笠原の無数の断片です。

現 在・・・
コウモリ 小笠原の自然・文化・習慣は、現在、日に日に消えていく環境下に置かれています。これらは長い年月をかけて形成されたものであり、そこにはこの大海原に生きてきた多くの知恵や工夫があるはずです。これら「宝物」をなくなる前に見つけだし、次世代に伝えなければいけません。

  新世紀・・・
 新世紀は、すべてを「情報」というかたちでのやりとりが可能な時代です。情報の流通 において、世界はもっと近く早く結ばれ、 ネットワークの中で生まれる新たな方法やルールによって物事が進んでいくことになるでしょう。 シマアカネ  情報により世界が近くなることはさまざまな利点を生み出しますが、欠点もあります。同じ情報で世界が結ばれることは、世界が小さく平均化してしまうことでもあります。また、沢山の情報でかえって自分の居場所が分からなくなったり、逆に、わずかな情報を”全て”と信じてしまったりするかもしれません。 世界が「情報」の大洪水の海を漂う時代にあって、小笠原も情報拠点を持たねばならないのです。自らの情報を自らが収集・保管・利用し、そして発信出来る場を持ちたい。 その場となれるのが、新しい時代の博物館だと思うのです。