9.協働プロジェクト

2000年に1羽のアホウドリが飛来したことをきっかけに、調査だけでなく、さまざまな取り組みが開始されました。小笠原のアホウドリにかかわる連絡協議会は、小笠原の行政機関だけでなく、父島、母島の両漁業協同組合と両観光協会、小笠原海運、ホエールウォッチング協会、NPOの野生研とi-Boが参加する、おそらくはじめての官民越境の話し合いの場となりました。同協議会で2004年3月に発行したパンフレットには、長谷川博先生(東邦大学)が全面協力して下さり、i-Bo(小笠原自然文化研究所)が制作しました。16年前の冊子ですが、復刻してご紹介します。

・2000年〜 アホウドリ類モニタリング調査開始(東京都委託調査)
       南島における海鳥モニタリング開始(東京都委託調査+独自)
・2002年〜 独自に聟島列島のノヤギ排除後の海鳥調査を開始(後に東京都調査に編入)。
・2003年・2004年  企画展開催 小笠原をアホウドリの島へ(東京都共催)
・2004年〜 独自にコアホウドリ標識調査を開始。
・2004年  米魚類野生生物局「アホウドリ再生チーム」第2回会合オブザーバー参加※
・2004年〜 小笠原アホウドリ連絡協議会の立ち上げに参画。パンフレット製作※
・2004年〜 クロアシアホウドリの主要分散地他における標識調査を東京都と共同で実施。
・2005年〜 母島南崎海鳥繁殖地の保全事業を開始。
・2006年〜 東島における外来ネズミによる海鳥被害状況調査開始(地球環境総合)
・2007年  南硫黄島学術調査 海鳥・オオコウモリ・海洋生物ほか
・2008年〜 人工繁殖地以外のアホウドリの飛来モニタリングを東京都と共同で実施。
・2011年〜 東島森林性海鳥の地 希少ミズナギドリの生息地保全 開始
       国有林との共同モデルプロジェクト開始
・2017年  南硫黄島学術総合調査 参加 海鳥・オオコウモリ・海洋生物ほか


http://www.ogasawara.or.jp/ibohome/研究所の活動/アホウドリ/

http://www.ogasawara.or.jp/ibohome/研究所の活動/海鳥と外来種対策/

https://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/ahoudori/information/topics/top040733.html



●小笠原諸島のミズナギドリ目鳥類

小笠原諸島には、10種のミズナギドリ目鳥類が生息しています。詳しくみるとアホウドリ科3種、ミズナギドリ科5種、ウミツバメ科2種となっており、このほか、カツオドリ目、ネッタイチョウ目、チドリ目の海鳥が生息する海鳥の楽園です。しかしながら、海鳥の楽園は、常に存続の危機を抱えてきました。特に、希少種・絶滅危惧種が多い小型のミズナギドリやウミツバメの繁殖地において、外来哺乳類による大きな影響が生じており、保全対策が必須の課題となっています。

i-Bo(小笠原自然文化研究所)のとりくみ

 i-Bo(小笠原自然文化研究所)とアホウドリ類の出会いは2000年。聟島列島に1羽のアホウドリが飛来したことがはじまりでした。それは、羽毛採取による乱獲で絶滅したと言われてから、実に70年ぶりのことでした。4年間の東京都による委託調査を経て、コアホウドリの独自モニタリングを開始。この他、クロアシアホウドリの新規定着地や、人工繁殖地以外の島でのアホウドリのモニタリングを東京都と共同で継続しています。

 また、ミズナギドリ類との出会いも2000年でした父島列島の南島における植生回復調査(東京都)で、海鳥類のモニタリングを開始したのがはじまりです。その後、聟島列島においてノヤギが排除された後の海鳥類のモニタリングも独自に開始(後に東京都調査に編入)、両モニタリングは20年以上継続し、海鳥たちの変化を詳細に追跡しています。

 さらに、セグロミズナギドリや、オガサワラヒメミズナギドリの独自調査と保全対策も実施、継続しています。アホウドリが70年ぶりに飛来した2000年は、i-Bo(小笠原自然文化研究所)がスタートした年でもありました。

 この20年、小笠原諸島の海鳥自身にも、彼らの生息環境にも大きな変化がありました。それ以前からの長期に渡る多くの人々の努力により、奇跡的な生息数の回復をみせ、小笠原にも繁殖地が回復しつつあるアホウドリは、象徴的な存在でしょう。今、非常に厳しい状況にある小型のミズナギドリたちも、20年後、そして、50年後、100年後、先祖と同じように彼らが自分達の海と空を取り戻しているよう、彼らの生命力と、人の意思と努力と工夫が継続されるよう願っています。

2000年、70年ぶりに小笠原諸島への飛来が確認されたアホウドリ。

●i-Bo(小笠原自然文化研究所)は、世界アルバトロスデー実行委員会に参加しています。2020年6月の第1回目となる東京イベントは、残念ながら、新型コロナの影響により中止となりましたが、i-Boでは小笠原諸島に生息する希少なミズナギドリ目鳥類を紹介するとともに、これまでの取り組みや、明らかなった新知見や必要な保全策などについても、このコーナーでご紹介します。以下、長文になりますが、世界アルバトロスデーについて、「世界アルバトロスデー2020」実行委員会委員代表:長谷川博さんの呼びかけを転載します。
 https://albatrossday.org/preview/yobikake.html




 2019年5月に開催された会議で、ACAP(The Agreement on the Conservation of Albatrosses and Petrels:ミズナギドリ目鳥類の保全に関する国際協定、日本は未加盟だが、加盟国会議にオブザーバーとして参加)は、この協定が2001年に調印された日に因んで、6月19日を「世界アルバトロスデー」と定め、世界のミズナギドリ目鳥類が直面している苦境を説明し、それらの保全活動が急務であることを世界の人々に呼びかけることにしました。第1回は2020年に行なわれます。(『協定の対象種対象種』)

 世界には約360種の海鳥類が生息し、そのうち110種、すなわち約30%の存続が危ぶまれています。海鳥類は、鳥類のうちでもっとも絶滅の危機に瀕しているグループの一つです。海鳥類のうち、お互いに近縁で、潜水して水中を“飛翔”するペンギン類(18種中10種が絶滅危惧、56%)と抜群の空中飛翔力をもつミズナギドリ類(140種中64種、46%)が、とくに危機的状況にあります。そのミズナギドリ類のなかでも、アルバトロス(アホウドリ)類はいちだんと厳しい状況にあります(22種中15種、68%)。すでに「世界ペンギンデー」が4月25日に定められていて、今回、新たに「世界アルバトロスデー」が提唱されました。

 ほとんどの時間を外洋海域で生活し、繁殖のためにだけ絶海の孤島に集結するミズナギドリ目鳥類は人間とは無縁だと、多くの人は想像するかもしれません。しかし、それは誤りで、かれらを危機的状況に追いやっているのは、じつは人間の活動なのです。

 その第一は、外洋域で行なわれる商業漁業(延縄漁業や底引き網漁業など)による「混獲」です。毎年、推定で約30万羽がその犠牲になり、成鳥・若鳥の死亡率が上がります。また、人間が繁殖地の島にもちこんでしまったネズミ類が卵やひな(ときには成鳥も)を捕食し、繁殖集団の出生率を下げています。その結果、いわばダブルパンチを受けて海鳥類の個体数は激減しました。そのほかに、人間が排出した大量のプラスチック類による海洋汚染も海鳥類の生存に影響を及ぼしています。海鳥類の大部分は海面に浮遊するプラスチック類の断片をえさと間違えて摂食してしまい、多量に取り込んだ場合には消化管をつまらせて死亡します。また、親鳥から与えられるえさに多数のプラスチック片が混じっていると、ひなの胃にそれらが蓄積して栄養不良や脱水症状を引き起こし、死に至ります。最近の研究から、誤って摂り込んだプラスチック片の量がたとえ少量であっても、海鳥に健康被害を及ぼすことが明らかになりました。さらに、気候変動による海洋環境の変化が、将来、海鳥類の生活に大きな影響を及ぼすにちがいありません。

 これまで世界各地で、こうした影響を減らすためにさまざまな工夫がなされ、鳥たちを保全するための積極的活動が実行されてきました。しかし、まだ十分とはいえません。今、この地球上でともに生きる仲間であるアルバトロス類などのミズナギドリ目鳥類やその他の海鳥類を危機的状況から救済するために、いっそうの努力が求められています。

 日本で、絶滅のおそれのある種に指定されている鳥類98種のうち海鳥類は20種で、全体の2割を占めます。また、繁殖している海鳥類は39種なので、半分が絶滅の危機に立たされています。日本でも「世界アルバトロスデー」に参加して、海鳥類の保全の取り組みを強めましょう!

「世界アルバトロスデー2020」実行委員会 委員代表:長谷川博

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