1.小笠原の生物

 「オガヒワ」は、小笠原固有種「オガサワラカワラヒワ」の愛称です。小笠原でもめったに会えない希少な小鳥「オガヒワ」は、大幅に数を減らし、現在環境省の絶滅危惧種に指定されています。
 小笠原の生きものシリーズ第3弾となるこの本は、2020年12月に開催された「オガサワラカワラヒワ保全計画作りワークショップ」で話し合われた内容に加え、「オガヒワ」についてわかってきたことを幅広い年代の方に向けてご紹介するために制作されました。

 ご希望の方は、父島は、IBO事務所、母島はアイランズケア事務所にて税込1000円にて販売しております。
島外でご希望の方は、別途180円の送料がかかります。i-bo@ogasawara.or.jpまでご連絡ください。

絵本 全14P

 ヒメトビケラ類の分類学者である伊藤富子さん(北海道水生生物研究所)、分子系統解析を担当された菅原弘貴さん林文男さん(東京都立大学)と当研究所の共同研究成果が、学術雑誌Zootaxaに掲載されました(https://doi.org/10.11646/zootaxa.5231.2.2)。

 トビケラ、カゲロウ、カワゲラの仲間は“川虫”の御三家と呼ばれる代表的な水生昆虫です。世界の河川や湖沼に多種多様な種が生息し、水質を評価する指標生物でもあります。しかし、淡水生物ゆえに絶海の海洋島小笠原に定着できた種は限られ、カゲロウとカワゲラは皆無、数種のトビケラが知られるのみでした。今回、そのうちの1種のオガサワラヒメトビケラにそっくりな新種が一挙に5種見つかりました。

 トビケラの成虫はガに似ていますが、羽は鱗粉の代わりに細かい毛が密生し、可愛らしい姿をしています。特徴的なのは水中生活を送る幼虫で、筒巣(つつす)という寝袋のような巣を背負っています。筒巣は幼虫が糸を吐き、水中の砂粒、落ち葉、藻類などを紡いで作ります。その素材・形は種によって様々で、時にその秀逸な自然美に圧倒されます。

 これまで小笠原諸島の河川からは多くの固有種が発見されてきましたが、いずれも祖先種が隔離された後に単一の固有種へと種分化した事例でした。しかし、オガサワラヒメトビケラ種群は、小笠原諸島内で複数の固有種に分化したことが突き止められた最初の陸水動物で、また形態も生息環境も特異的な変化が生じています。詳しい内容を知りたい方はぜひサイドメニュー「1.小笠原の生物」より和文要約をご覧ください。

オガサワラヒメトビケラ種群の幼虫
主に滝に生息する種の幼虫の頭部は丸い。
ムグリヒメトビケラの幼虫
河床間隙(沈み石の裏)に潜って暮らす種の頭部は扁平で尖る。
ナガハマヒメトビケラの成虫
トビケラの仲間の羽は鱗粉の代わりに密な毛で覆われる。

伊藤富子(北海道水生生物研究所)・佐々木哲朗(小笠原自然文化研究所)・高橋千佳子(小笠原自然文化研究所)・菅原弘貴(東京都立大学)・林 文男(東京都立大学)

東京から1000 km南の太平洋上の海洋島・小笠原諸島で,成虫・幼虫の形態観察と遺伝子分析により,ヒメトビケラ類の分類学的研究を行った.

1.ヒメトビケラ属の5新種,ムグリヒメトビケラ, イシウラヒメトビケラ,トコヨヒメトビケラ,ハハジマヒメトビケラ,ナガハマヒメトビケラ,が認められた.既知種のオガサワラヒメトビケラと合わせて小笠原諸島のヒメトビケラ類は6種となり,全て固有種だった.(小笠原における適応放散①).(以下では,種名の”ヒメトビケラ“を略す).

2.各種の分布範囲は比較的狭く,ムグリ,イシウラは父島北部と兄島に,オガサワラは父島に,トコヨは父島南部に,ハハジマは母島南部に,ナガハマは母島中部にみられた.

3.ムグリの幼虫は,細長く扁平な頭をしていて,粗い砂粒でさやえんどう型の筒巣を造り,河床間隙hyportheic zoneに生息していた.ヒメトビケラ属ではこのような形態,筒巣,生息場所の種は知られていない.小笠原では先住者のいない河床間隙に生息するために,幼虫の形態が変化し,筒巣も変化したと考えられる.(小笠原における適応放散②)

4.ムグリ以外の5種の幼虫と筒巣は,典型的なヒメトビケラ型だった(頭は丸く,腹部は左右に扁平で4-5節が背腹にふくらむ.筒巣は細かい砂粒や植物片を綴ったメガネサック型で,前端と後端にスリットがある).しかし,これら5種の形態と生態には,他の地域のヒメトビケラ属では見られない2つの特徴があった.一つ目は幼虫の第1~3節の背面に小硬板があること,二つ目は小沢に加えて濡れ崖や滝 (hygropetric habitat)にも生息していることである.小笠原では濡れ崖や滝のスペシャリストがいないので,これら5種はその空きニッチに進出し,幼虫背面の小硬板はそこでの生息に有利なように(流れの中で筒巣が抜けてしまわないように?)形成されたと考えられる.(小笠原における適応放散③)

5.ムグリとその他の5種を比較すると,幼虫や筒巣の形態や生息場所が全く異なっているが,オス成虫の形態や遺伝子では,ムグリだけ系統が異なるわけではなかった.

6.トビケラにおけるこのような現象(狭い地域での多種への分化,および空きニッチへの進出とそれに伴う幼虫の形態と筒巣の変化)は,ガラパゴスやハワイなど他の海洋島では知られていない.小笠原のトビケラ類はとてもユニークである.

 小笠原諸島の兄島、父島、母島の河川淡水域から、新種のヨコエビ類が2種発見されました。この2新種は、広島大学の富川光博士と小笠原自然文化研究所の共同研究により、ドイツの国際動物学雑誌(Zoologischer Anzeiger)に論文として報告されました。https://doi.org/10.1016/j.jcz.2021.12.005
 新種は、オガサワラメリタヨコエビ(Melita ogasawaraensis)、ヌノムラメリタヨコエビ(Melita nunomurai)と命名しました。オガサワラ(種小名 ogasawaraensis)は産地の小笠原諸島を表しています。ヌノムラ(種小名 nunomurai)は、甲殻類分類学者の布村昇博士にちなんでいます。布村博士はオガサワラフナムシやオガサワラコツブムシなど、小笠原諸島の固有甲殻類を数多く新種記載されています。
 メリタヨコエビの仲間は世界から約60種報告されていますが、多くは海産種または汽水種で、淡水種はこれまで6種しか知られていませんでした。今回の発見は、国内から初めての淡水産メリタヨコエビ類の記録となりました。論文では、同時に琉球諸島からも淡水生の2新種(ミヤコメリタヨコエビ、オキナワメリタヨコエビ)を報告しています。
 遺伝子の解析から、小笠原産2新種はそれぞれ独立して小笠原諸島の淡水域に侵入したと考えられます。研究グループでは、幅広い塩分耐性を持つ汽水種が、過去に海流によって小笠原諸島にたどり着いた後、淡水種へと進化したのではないかと考えています。
 小笠原諸島の自然環境は、主に外来種問題によって危機的な状況が次々と発覚し、日々懸命な保全活動が行われています。一方で、未だにこのような新発見があり、世界自然遺産にも登録された同諸島の生態系の奥深さを表しています。

オガサワラメリタヨコエビ Melita ogasawaraensis Tomikawa & Sasaki, 2022 
ヌノムラメリタヨコエビ Melita nunomurai Tomikawa & Sasaki, 2022

●小笠原諸島のミズナギドリ目鳥類

小笠原諸島には、10種のミズナギドリ目鳥類が生息しています。詳しくみるとアホウドリ科3種、ミズナギドリ科5種、ウミツバメ科2種となっており、このほか、カツオドリ目、ネッタイチョウ目、チドリ目の海鳥が生息する海鳥の楽園です。しかしながら、海鳥の楽園は、常に存続の危機を抱えてきました。特に、希少種・絶滅危惧種が多い小型のミズナギドリやウミツバメの繁殖地において、外来哺乳類による大きな影響が生じており、保全対策が必須の課題となっています。

i-Bo(小笠原自然文化研究所)のとりくみ

 i-Bo(小笠原自然文化研究所)とアホウドリ類の出会いは2000年。聟島列島に1羽のアホウドリが飛来したことがはじまりでした。それは、羽毛採取による乱獲で絶滅したと言われてから、実に70年ぶりのことでした。4年間の東京都による委託調査を経て、コアホウドリの独自モニタリングを開始。この他、クロアシアホウドリの新規定着地や、人工繁殖地以外の島でのアホウドリのモニタリングを東京都と共同で継続しています。

 また、ミズナギドリ類との出会いも2000年でした父島列島の南島における植生回復調査(東京都)で、海鳥類のモニタリングを開始したのがはじまりです。その後、聟島列島においてノヤギが排除された後の海鳥類のモニタリングも独自に開始(後に東京都調査に編入)、両モニタリングは20年以上継続し、海鳥たちの変化を詳細に追跡しています。

 さらに、セグロミズナギドリや、オガサワラヒメミズナギドリの独自調査と保全対策も実施、継続しています。アホウドリが70年ぶりに飛来した2000年は、i-Bo(小笠原自然文化研究所)がスタートした年でもありました。

 この20年、小笠原諸島の海鳥自身にも、彼らの生息環境にも大きな変化がありました。それ以前からの長期に渡る多くの人々の努力により、奇跡的な生息数の回復をみせ、小笠原にも繁殖地が回復しつつあるアホウドリは、象徴的な存在でしょう。今、非常に厳しい状況にある小型のミズナギドリたちも、20年後、そして、50年後、100年後、先祖と同じように彼らが自分達の海と空を取り戻しているよう、彼らの生命力と、人の意思と努力と工夫が継続されるよう願っています。

2000年、70年ぶりに小笠原諸島への飛来が確認されたアホウドリ。

 この度、写真絵本『おどろき!おもしろい!小笠原の水の生きもの』を発刊いたしましたのでご案内させて頂きます。IBOでは2011年から、島っ子に向けた小笠原の自然に関する副読本づくりを進めています。今作は、『オガサワラオオコウモリ森をつくる』、『アカガシラカラスバトの棲む島で』に続く3作目、自費出版・小笠原の生きものシリーズの2作目にあたります。控えめな存在ながら、人と同じく水を利用する仲間である川や海岸の生きものにスポットライトを当てました。これまでに撮りためた写真を使用し、彼らの興味深い世界を島ライター有川美紀子さんに綴って頂きました。イラストレーター池田泰子さんが描いたオガサワラヨシノボリや川の風景も必見です。今後は島内で実施する観察会で配布し、水辺の学習や保全に役立てて行きたいと思います。

 ご希望の方には父母IBO事務所にて税込み1300円でお渡しいたします。島外の方でしたら、送料215円を足して頂ければ発送いたします。島外でご希望の方は、i-bo@ogasawara.or.jpまでご連絡ください。

数年にわたり、探索を続けてきた
オガサワラヒメミズナギドリの営巣がついに確認されました!

関連記事は 当HP をご覧くださいませ。
今日のレスキュー 2012年2月8日記事

報道資料(森林総合研究所)
https://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2015/20150324/index.html

過去の報道資料
http://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2012/20120207/documents/20120207.pdf

2014/9/19  ついにカツオドリの巣立ちを確認しました。
8年ぶりに南崎での営巣の成功の瞬間でもあります。
カツオドリはそのまま飛び上がり…15分後再び舞い戻ってきました。
元の巣をそのままねぐらとして使うのは珍しくはなく、しばらくはヒナの成長を見守れる様です

母島南崎 カツオドリのヒナ

 2014年5月、南崎半島部にカツオドリの飛来が確認されました。この南崎半島部はノネコから海鳥を守る為にフェンスを築いた場所であり、カツオドリのデコイを置いて、カツオドリを再び南崎半島部に戻すための試行錯誤を行っていた場所でもあります。
 同7月10日産卵と交尾を確認。24日には真っ白いヒナを確認する事が出来ました。

 山域のノネコ対策が進み、昨年は晩春から夏にかけて多くのアカガシラカラスバトの若鳥が集落周辺に姿をみせましたが、今年も4月下旬頃より集落周辺に姿を現しています。残念なことに1羽の若鳥がネコに襲われ命を落とすという事故がすでに起きてしまいましたが、若鳥の増加とともに増えてきたいろいろな事故を未然に防いでいくために、「アカガシラカラスバト・オガサワラオオコウモリに関する連絡会」が発足し対策を行っています。
14日には、大神山公園大村中央地区に今年もハトが現れることを想定し、ネコへの対応や見学者のコントロールについて関係者が集まり対応を確認しました。島民に対しては、この1年間に起こった“あかぽっぽ”の事故を伝え、“あかぽっぽ”の見学方法や事故防止のためのお願いを記載したチラシを本日全戸に配布しました。>

特定非営利活動法人(NPO法人) 小笠原自然文化研究所
〒100-2101
東京都小笠原村父島字西町
光子ハウス1号
Tel&Fax:04998-2-3779
e-mail:i-bo@ogasawara.or.jp