7.サンゴ白化

2018年11月4日
NPO 小笠原自然文化研究所

 2018年10月、小笠原諸島父島宮之浜において高水温によるイシサンゴ類の白化現象が観測されました。このような白化が観測されたのは2009年以来、9年ぶりです。白化率が高いのは父島宮之浜の水深1〜2m付近で、サンゴ全体の30%が白化している状態でした。主な白化種は高水温の影響を受けやすいコモンサンゴ類です。その他の小笠原周辺海域からは30%を超える様な顕著な白化情報が無いため、小笠原全体としては白化の初期段階にあると考えています。今シーズン、父島周辺では夏季の水温が例年より高く、10月に入っても低下しませんでした。11月は例年水温が低下する季節ですので、白化したサンゴも回復する可能性があります。しかし、高水温状態が続くと、周辺海域や他のサンゴ種にも白化が進行する可能性があります、当研究所は観測を続け、回復や被害状況を明らかにするよう努めていきます。

父島宮之浜のサンゴ白化状況(2018年10月25日撮影/水深1〜2m)
A:白化したサンゴ類、B・C:コモンサンゴ類は白化しているが、優占種オガサワラアザミサンゴでは白化は軽微、D:周囲のコモンサンゴ類は白化しているが、写真中央の優占種サボテンミドリイシは今のところ白化していない

小笠原諸島聟島列島父島列島における造礁サンゴ類の白化状況(速報)

2009年8月30日
特定非営利活動法人
小笠原自然文化研究所
佐々木哲朗・鈴木創

I. はじめに

小笠原諸島は、2003 年に母島海域において大規模な白化が確認されて以来、造礁サンゴ類の深刻な白化は観察されていない。しかし、今シーズンは 7 月から 8 月にかけて 海水温の高い状態が続き、暖水渦の接近に伴う異常潮位も観測されている。父島の二見湾では 8 月中旬頃から、浅瀬海面下のサンゴ礁全体が明らかに白く感じられるようにな った。そこで、当研究所は 8 月 20 日から 25 日にかけて、聟島列島嫁島、父島列島兄 島および父島周辺海域の合計 8 地点において、スポットチェック法による簡易な観察に より、造礁サンゴ類の白化程度について予備的な観察を実施した。本報告は観察結果を 速報として取りまとめたものである。

II. 本調査における調査項目の定義

・サンゴ被度: サンゴが生育可能な基質面積に対するサンゴ生育面積の割合。砂底や礫 底は分母から除外。
・ 白化率: サンゴ全体に対する純白(またはそれに近い白色)部位の割合。
・ 群体白化率: サンゴ全群体に対する白化部位を持つ群体の割合。スギノキミドリイシが高密度に生育する二見湾奥 St. 1 において計測。
・主要生育種の白化率: 出現頻度の高い種(またはグループ)内における白化部位の割合。

III. 観察結果

○地点 1: 聟島列島嫁島西岸
  調査日: 2009年8月25日
  調査水深: 1m~15m
  サンゴ生育型:多種混合型
  サンゴ被度: 約 40%
  白化率: 約 70%
主要生育種の白化率: イボハダハナヤサイサンゴ(90%)、ヘラジカハナヤサイサンゴ(5%以下)、コモンサンゴ属各種(約 90%)、サボテンミドリイシ(約 80%)、被覆状 ミドリイシ類(オヤユビミドリイシ他)(約 90%)、クシハダミドリイシ(約 90%)、そ の他のミドリイシ属小型種(約 70%)、コブハマサンゴ(約 60%)、小型塊状キクメイ シ類(コカメノコキクメイシが優占)(約 50%)。