レスキュー

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8月初旬、まだ綿毛・黒玉のヒナでした
3ヶ月かかって 今巣立ちを迎えてます

今年は、全国的に台風年となりました。6月中旬から、太平洋上のどこかに台風があることが多く、とくに9月から10月にかけて沖縄を席巻したいくつかの台風は、まさに記録的なものでそた。沖縄の先輩、知人、友人達、生きもの達のことが心配でした。小笠原でも7月末頃から近海の通過が続きました。幸いに、直前でコースがかわったり、勢力が落ちたり、直撃時の被害を知る人たちは「助かった」と胸をなで下ろしていました。生き物には、タイミングというものがあります。台風被害でも、これが重要になってきます。のらりくらり と言いましょうか、なんとか、ギリギリでかわしてきた感じの今年の小笠原でしたが、10月に入ってからの複数台風での大時化に、アナドリの巣立ち時期が完全に当たってしまいました。不時着や、港付近で溺れかけた個体の救護が続いています(なぜ、港湾の波打ち際で多いのだろうか?)。尾翼が伸びきらないものも多く、巣立ち直前に飛ばされた可能性もあります。アナドリの巣立ちは例年10月中旬から下旬まで続きます。島のみなさま、ぜひ、ご注意を。

Thanks  多くの島の皆様

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写真は8月下旬 薄明薄暮の道路脇

アカポッポは、その後も出続けています。そして、心配されていたことがおこりました。まず、建物への衝突。ハトやトラツグミのように、羽ばたきが強く、瞬発力がある鳥では、とくにガラスやネットなどへの衝突が起きやすいのです。それでも、アカガシラカラスバトは、大変に数が少ないので、過去に1度、母島で電線に衝突死した事例があるのみでした。建物で2例目、3例目が発生、1例は死亡しました。また、交通事故も複数発生しました。近くに餌がある状況で、道路を低空で横切った、あるいは路上でひかれたものでした。ネコには公園で襲われました。アカガシラとネコのニアミス事例は、何度も繰り返し確認されました。建物、車、ネコ。このコーナーで10年来、あつかってきた海鳥のレスキュー要因そのものであり、人の活動域内でこれまでもずっとおきてきた、予想された事例とも言えるでしょう。

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すこしばかり季節外れのシロハラミズナギドリ。6,7月に巣立っていれば、もうこの海域にはいなくても良いのですが。夕方に街の灯りが見えない浜辺から放鳥しました。

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6月に入りメジロやオガサワラヒヨドリの保護が相次いでいます。はっきりしない天気が続いてはいますが、小笠原はもう梅雨明け時期、初夏なのです。メジロやヒヨドリの保護がこの時期に多いのは例年のことで、そのわけは、巣立ちの時期をむかえているからです。まだ、おぼつかない若鳥たち。巣から落ちたり、巣ごと落ちたり・・・・ハイビスカスの垣根から垣根へ、道路を横切るときに車にぶつかったり、平気で車道に降り立ち、街中のネコにちょっかいを出されるのもこの時期です。

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ガラス窓にのこる衝突痕

アカガシラカラスバトのバードストライクがおきました。残念ながらぶつかった個体は死亡しました。産まれて1年以内の若い鳥でした。山域のノネコ捕獲が進むなか、この3年ほど、これまでまったく見ることのできなかった、まだ頭の赤くない若鳥(クロポッポ)が、見られるようになりました。父島の山域での繁殖も確実に手応えのあるものになってきています。集落地域におけるガラス衝突、ネコ襲撃、交通事故は、もともと多くの野鳥が直面している問題でした。アカガシラカラスバトが増える ということは、沢山いる他の鳥と同じ脅威にさらされる確率も、また高くなる ということかもしれません。