コハクチョウ2003

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福島県鳥獣保護センター

12日夜、福島県鳥獣保護センターに無事到着したとの知らせがありました。おがさわら丸では多少の動揺があったものの、落ち着いた状態で竹芝まで到着し、その後のトラックによる約4時間の搬送にも堪えきったようです。脱水はあったようですが、大きな体調の崩れもなく、さっそく雑穀類を食べたとのことです。環境が大きく変化した際には、感染症等さまざまな余病が発生することがあるため、数日はその監視となるようです。なんとか、福島の気候に慣れてほしいものです。まだ終わったわけではありませんが、ここで第1段階(アニマルレスキューで言うところの一時救護)は終了です。
(株)小笠原海運、(株)日本通運ペリカン便、搬送に携わって頂いた皆様、現地救護をサポートしてくれた島の沢山の皆様に厚く御礼申し上げます。特に発見・救護に力を発揮してくれた島の子供達に感謝します。また、この冬一番の冷え込みとなっている休日の夜に、スタッフ全員でスタンバイして対処に当たって頂いている(きっと今も)、福島県鳥獣保護センターのみなさま、行政の垣根を越えて快く受け入れて下さった福島県庁の方々、小笠原支庁をはじめとする東京都の方々に、重ねて御礼申し上げます。
大型水鳥の救護から、遠隔地医療といえる島外との連絡・連携、島外への輸送等、すべてが試行錯誤でありましたが、これらはこれからも小笠原が、まだまだ蓄積していかねばならないことです。この貴重な体験を、近い将来、小笠原に設立されるべき(作られる・作れると信じます)施設、・・・・小笠原の野生動植物を調査・モニターし、保全し、そして救護や保護もしていく核となる施設・・・・・(仮称)小笠原ワイルドライフ・マネージメントセンターのための技術・経験蓄積として必ず生かしたいと思います。今晩は、みなさまへの御礼まで。
写真は、私が昨年5月に福島県鳥獣保護センターに勉強しに行った時のものです。本館の裏手に広い雑木林が拡がり、その各所に機能目的別に製作された多くのゲージや物置等が点在しています。

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本日出港のおがさわら丸

福島県鳥獣保護センター、小笠原海運、日通の全面協力、東京都からのサポート、そして何よりも沢山の島の人達の協力を得て、今日1月11日コハクチョウは1200km先の北の福島へ向かい出発しました。大型鳥類(しかも傷病鳥獣)を30時間以上かけて運ぶ例は多くありません。無事たどり着くことが出来るのか? 誰にもわかりませんが、あとは強運を信じたいところです。最初に確認された2003年12月 11日から丸1月後のことでした。

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すっくと立った姿

一時、4.6kgにまで達した体重の増加が止まりました。首はすっくりと伸びるようになり、後頸部のだるさもとれたようです。羽も背中で盛り上がり、翼力も徐々に復活してきているのでしょう。しかし、室内のしかもレスキュー用ではないゲージの中での一時飼育も26日目を迎えるにあたり、ストレスや、さまざまな病気などの心配も出てくる時期となりました。食欲も減退気味で、当初目標としていた5.0kgにはまだまだ及ばぬ状況ですが、これ以上の南の島(小笠原)での飼養はリスクも増してくるため、体力のあるうちに福島県鳥獣保護センターへ搬送することを決定しました。11日父島出航の「おがさわら丸」です。

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ただいま水浴び中

コハクチョウは体重が4.5kg近くになり、力も強く、威嚇も増して、順調な回復を見せています。
12月後半からは水浴びも解禁となりました。特に初めての水浴びの際には、生きる意欲と自分が水鳥であることを思い出したかのように、一心不乱に身体全体を水面に打ち付け、やがて汚れた尾羽からお腹、胸などを入念に入念に、器用に嘴を使いシゴクように洗っていました。

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ゲージの散策

コハクチョウは、その後も、ずっと継続的に自力で立ち続けることが出来るようになりました。目線や首の動きは小刻みになって随分と鳥らしさが戻ってきました。徐々にですが、背中の翼の位置も高くなってきました。そして、25日にはなんとゲージの中を歩き回り、脱走さえねらっているようなそぶり。強制給餌は続いていますが、体調は確実に上向きのようです。、


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