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以前、春はクロポッポ(アカガシラカラスバトの若鳥)にとって鬼門、と描きました。この春は特に事故が続いており、アカポッポネットワーク、オガヒワの会という いずれも絶滅回避の保全計画づくりワークショップをきっかけにスタートした両会のメンバー宛てにお便りをしました。以下に全文を転載します。長文になりますが、ご一読頂ければ嬉しいです。

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この冬から春は 沢山母島に通いました。沢山通うと、ははじま丸からザトウクジラをみたり、冬繁殖の海鳥を探したりするのも楽しいものでした。その一つが、皆既日食。船の上からは、曇り空もおつな感じで、味わい深くなりました。

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春を感じる海鳥が保護されました。クロウミツバメです。現在、世界中で、南硫黄島の山岳域でしか繁殖が確認されていない小笠原固有の海鳥です(海鳥は広い行動圏を持つので固有種は珍しい!!) 今は、夏繁殖のクロウミツバメの子育てがはじまる季節なのです。さて、話は飛びますが「ハリー・ポッター」では、魔法を学ぶマホウトコロが世界で11カ所あり、日本では唯一南硫黄島の山頂にあるとのこと。寮に入れない生徒はクロウミツバメの背中に乗って・・・?
https://harrypotter.fandom.com/ja/wiki/マホウトコロ
Thanks Hiroshi SATO

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父島西町の研究所の周りにもアカガシラカラスバトが出現する季節となりました。自然の樹木の種子(落ちて埋まったものもの含めて)が豊富な秋から冬をすぎて、春から夏は餌の少ない山から低標高の畑や集落、海岸に降りてきます。ジュズサンゴ、ウスカワマイマイ、ミミズ、島唐辛子などを求めて徘徊する季節になります、特に、経験の少ない若鳥(クロポッポ)は、群れるように、父島、母島の集落や畑、そして道路に出てきます。実はこの季節は、若鳥にとって鬼門、交通事故などの頻発する時期なのです。毎年10羽以上の若鳥がこの季節に命を落としてしまいます。特に早朝や夕方は危険です。ゆっくり運転で、少しでも彼らの命を救いたいものです。

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今日は、長いです!
先日、バナナの繊維に絡まったオオコウモリの子供が保護されました。
絡まり事故は、想像を越えて深刻です。腕が太いロープで何時間も縛り上げられる事態を想像してもらえると、深刻、も伝わるかも。ただし、今日の話は、バナナの茎まで喰った、というほうです。葉っぱを食い尽くし、茎まで囓って出液をすすっているうちに、自分たちで囓りちらしたバナナの強い繊維にこんがらがってしまったのです。こんな絡まり珍事は、あの2019年の記録的台風19号の翌夏以来でした。

実は、今、ここ数年で例のない、極端な餌不足となっています。つまずきは、2022年4月の台風。いろいろな花が叩かれ、その後の結実や植物季節に波及。つぎは、8月、突然直角に進路を変えて西進した台風。トドメは11月−12月に連発した豪雨とど晴天のくりかえし。もともと、真夏(7−8月)と真冬(1−2月)は、天然餌が不足して、農作物への食害が問題になる時期ですが、今冬は非常に深刻な餌欠乏へ。例年なら餌不足時期にも、ダラダラどこかで結実してつないでくれるはずのガジュマル、シマグワ※が、12月の頭までに一斉に大結実。で一気に落果してしまいました。アカギの結実の終わりとも同調してしまいました。冬季に結実する在来種ものきなみ凶作で、それ以降は完全に餌切れ状態に。現在、みつかる天然餌は、ヒメフトモモ(実)で、これももうすぐ無くなります。

ボクらの観察からは、これらの影響がオオコウモリだけでなく、アカガシラカラスバト、メグロ、メジロ、オガサワラヒヨドリなどに及んでいる可能性が高いです。当然、ネズミ類との餌のとりあいも激化するはずで、こうなると、餌のある場所に動物が異常な集中と執着をみせやすくなり、想定内外、さまざまな事態が連鎖的に発生しやすくなります。特に、この餌欠乏のタイミングで、開花をむかえるレモンは厳しい状況です。

これまでの経験から、3月末のビロウが開花する頃には一度リセットがかかり、落ち着きを取り戻すはず。そう信じていますが、まだまだ2月中旬。あと、40日以上は、人と作物にも、動物にも厳しい試練となりそうです。緊急のご連絡は、アイボ、またはアイボレスキューダイヤルへ。
※ 両方外来種ですが、島の生き物も大いに助けらている側面もあるのです。