2003年

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保健所に強制避難中のガーコ

台風通過中。保健所のコンクリ部屋の外を吹き抜ける風の轟音に時々驚いていましたが、すぐに慣れました。高い所をつくってやると、すぐに登って落ち着きます。??
初めて見る方へ、ガーコとは、返還後に父島で一部の人に呼ばれたカツオドリの愛称です。戦前はオサドリが呼び名で、米軍統治時代の愛称はブベでした。

 台風接近の前日、27日の夕方5時。雨雲が次々と過ぎて、激しい雨がひっきりなしにきました。港では潮が高く、また、入りだした「うねり」もあって、岸壁が洗われそうなかんじでした。そのコンクリの上で、昨朝放鳥したオナガミズナギドリが再発見されました。雨が羽毛の中にしみ出しており、本格的に休養させることにしました。
 雨はドンドン強くなり、村内防災無線が台風情報を放送し始めて、いよいよ台風接近秒読みとなりました。夕方には雨雲もあってあたりはどんどん暗くなり、いよいよタイムリミットか、と思われた時、西町頭上を飛ぶカツオドリらしき影を発見。あとを追いかけると、おなじみの青灯台付近に数人の人。その数人に囲まれてガーコがいました。(青灯台での発見には複数の方から事務所へも連絡を頂きました。本当に、ありがとうございます)。媒島の繁殖地から落ちて漂っていた海上での命拾い、今回も事態を察しての帰還と、運の強さを感じさせるカツオドリです。急きょ、保健所スペースをお借りして(ありがとうござます!)、台風通過まで匿うことにしました。

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「箱から出すと、いきなり飛んだ!」

台風前の9月25日、悪天候の中、オナガミズナギドリの不時着個体が持ち込まれました。電線か建物にぶつかって脳しんとう状態のところを、ネコに襲われて血だらけでした。幸い大きな傷・怪我もなかったので、少々栄養を与えて、一晩安静にしました。台風接近前なので子育ての時期でなければもうしばらく安静にするところですが、まさにこの時期は食欲旺盛なヒナが待っているので翌朝放鳥しました。

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青灯台にて

保護場所から飛び立ちながら、保護場所へ戻らなくなりはじめました。9月24日の昼前に父島大村海岸の青灯台付近で疲れて休んでいるところを発見。海で遊んでいた島のチビッコたちの上を何度も飛びながら、どたばたと陸に降りたようです。おそらくエサもうまく捕れずに、疲れたのでしょう。眼窩が落ち込み、力のない目に、チビッコたちはおじいちゃん鳥と思ったようです。この日はこのまま保護。ムロアジ2本を飲むと爆睡しました。
翌24日は、朝飛び立って発見は15時過ぎのこと。同じ青灯台付近でミズン(イワシ)釣りの人に交じって、しかも、釣ったイワシまでちゃっかり頂いていました。
25日は朝から天気が悪く接近する台風の雲の先発隊がかかりはじめて断続的な強い雨の繰り返し。ガーコは一日飛ばずにいました。
そして問題の26日、早朝に飛び去ったガーコは8:30すぎに二見湾内で確認され、その後、姿が見えなくなりました。強い台風が近づいていました。本格的な離陸が近づいているとはいえ、大きく天気が崩れだしたタイミングの悪さに、島内を探しましたが終日どこにも姿はありませんでした。

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成長したガーコの姿

ミズナギドリやアホウドリ達は、自分より大きく育ったヒナを残して、ある日突然に繁殖地を去ってしまいます。ヒナは、完全に取り残されて、充分に蓄えられた皮下脂肪を消費しながら、巣立ちの時期をひとりで迎えます。カツオドリは、少しちがって初飛行後も、しばらくの間は、親鳥から餌をもらっているようです。しかし、陸鳥のようにずっと親鳥の跡をついてまわり餌の捕り方を習うということはありません。写真は、すっかりスリムになり、成鳥と見間違うほど立派になったガーコ。しかし、初心者マークのごとく、まだお腹だけは茶褐色です。おぼつかない試運転飛行中、どこかに激突したのか?額と後頭部に怪我をして、すっかり毛がないところが見られます。