2003年

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風切り羽のみが黒かった「ガーコ」

いよいよ本格的に羽毛(白い綿毛)が抜けはじめ、成鳥へのカウントダウンが始まりました。下から生え揃ってきている成鳥羽のせいでしょう、白い羽毛は浮きぎみで、一日中盛んに羽つくろい というより 毛抜きに夢中です。クチバシの先端には白い毛玉がついていることもしばしばで、なんとも間抜けな風情ですが、これこそがいよいよ大人(成鳥)への階段を上り初めたという証拠でもあります。食欲は旺盛でムロアジやミズン(イワシ)を何本もたいらげます。
ぼろ布、エサのご寄付ご提供大歓迎でお待ちしてます。

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首を伸ばしてお休み中

生き物の形(外部形態)は、しばしばその生物の生活や進化の過程を教えてくれます。海鳥にもいろいろな種類がいて、クチバシの形だけを見てもさまざまです。カツオドリ類は、長くとがった特徴的なクチバシを持っています。小笠原の海では、翼を後方に折りたたみ、まるでひとつの矢のようになって、クチバシから海へダイビングするカツオドリを見かけます。空を飛びながら、透き通った海面下に魚(トビウオ、イワシ、イカなど)を見つけると、ものすごいスピードで垂直にに急降下して一気に捕まえるのです。長く尖ったクチバシは、この水中突入にとても適しています。
写真のような不思議な動作は日常的に見られます。食事後は、まるで飲み込んだ魚を横たえるかのように、朝夕にはまるでストレッチのように、クチバシを預けて首を伸ばします。海の生活に適した海鳥の「姿勢」にも、まだまだ謎が残されているかもしれません。
繁殖地からの落下の時のものか、ガーコのクチバシは深い傷だらけです。

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黒褐色部分が目立つようになった

運ばれてきたときは「まっ白」というイメージだったガーコ(カツオドリ)ですが、だんだんと黒褐色の部分が増えてきました。これは白い産毛の下に、徐々に成鳥羽がそろい始めている証拠です。背中や、翼角、それに嘴の届く下腹などが、特に「ゴマシオ模様」が目立ちます。額の生え際にもきれいな黒い縁取りができました。産毛か、成鳥羽の出始めがかゆいのでしょうか。さかんに、嘴で浮きぎみの産毛を引き抜くようにする仕草がよく見られるようになりました。小笠原の島々でカツオドリの巣立ちが始まるのは、はやいものでは9月末くらいからです。

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車にひかれたメジロ

最近、梅雨開け後に巣立ったメジロ、ヒヨドリをよく見かけます。尾が伸びきらず、体型も「丸っこく」、見るからにヒナという奴、見かけは成鳥と変わらないのに、ピーピー必死に鳴きながら親鳥を追いかけている奴。みんなまだまだ半人前(餌とりも飛ぶことも)で、ドジを踏みながら成長していく時期なのです。さて、この時期、実を付けているガジュマルやクワノキがあります。鳥にとって最高のレストランですが、同時に危険な場所にもなるのです。夢中になって、地面に落ちた実をついばむ時に悲劇は起こります。写真は、そんな時に車にひかれてしまったメジロです。また。レストランに入ろうと、低く低く道路を横切り飛ぶために車とぶつかる鳥もいます。道路近く、特に曲がり角にあるガジュマルなどは要注意です。鳥との交通事故は決まった場所で集中して発生することが多いのです。鳥の鳴き声や、路面の汚れで、「あ、いまこの木は実がなっていて、鳥が沢山集まっているな」と気付いたら、スピードを落として安全運転を!
※ガジュマル(の実)には、メジロ、ヒヨドリ、トラツグミ(実およびミミズ)、メグロ(母島)、アカガシラカラスバトなどがやってきます。特にアカガシラカラスバトが神出鬼没になる、夏から秋にかけては、町中や主要道路近くであっても注意が必要です。

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「放鳥だ、さあ飛んで行け!」

メジロ兄弟と時をおなじくして、相次いで3羽のヒヨドリが運び込まれました(このうち1羽は以前このコーナーで写真で紹介)。今年は、メジロやヒヨドリなどで、梅雨の前後に2度のはっきりした繁殖が認められ、8月後半の今も、巣立ちヒナがあぶなっかしく飛ぶ姿を見たり、懸命な鳴き声を聞いたりします。当研究所に持ち込まれ、手続きをとって放鳥を目標に保護を開始した3羽のヒヨドリも、誤保護1(過去ログ「巣立ちヒナを見つけたら、どうする?」参照)、ネコに襲われているところ救助1、建物への激突1の内訳で、いすれも巣立ちヒナか、梅雨前に巣立ったと思われる若鳥でした。結果は、1羽が放鳥、1羽死亡、1羽行方不明(おそらくノラネコにより捕食)と厳しいものでした。今年はこれまでになくヒヨドリの巣立ちヒナを多く見るように思います。繁殖数、そして死亡するヒナの数も、もしかしたら多いのかもしれません。