2023年5月

2023年の1月〜3月は、オオコウモリの餌不足が深刻でした。前年の10月〜12月に、度々の豪雨と、夏日のような晴天が繰り返された結果、例年であれば、ズルズルと長期間かけて、あちこちで結実してくれるガジュマルやシマグワが、一気に同調して12月頭に大結実してしまいました。また、前年4月の台風の影響か、熟さず(果肉を発達させないままに)落ちてしまうモモタマナも多く、特に母島では、年末年始に深刻な餌不足に突入し、農園での柑橘の葉食害が顕在化したのです。被害を防ぐために私も母島に通い、農家さん、農業関係者とともに夜のパトロールを続ける日々が続きました。そして、この写真です。これこそが待ちに待っていたビロウの花。この花がくれば、オオコウモリたちは花を求めて山に属島に戻ってゆくのです。小笠原では栽培種として導入されたビロウと、固有のメイジマビロウ、オガサワラビロウが自生していますが、3月下旬から、その順番通りに、次々と開花が始まり、嘘のようにオオコウモリの畑への飛来が止まったのです。春から初夏は、自生種の開花の季節です。サイザルアサ、モモタマナ、アレカヤシ、ヒメツバキ、タコノキ、テリハボク(タマナ)、リュウゼツランなどなど、次から次と花が続きます。導入されたヤシ科の花も花盛りです。これらの花のバトンが尽きる7月下旬までは、オオコウモリの食害を少し忘れて、ホッと出来る季節なのです。