レスキュー

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毎年、5月の連休頃から梅雨開け頃までは、イソヒヨドリのヒナが、あちこち、ピョコピョコ動き回る季節です。ちっちゃな羽根が生えてきて、親の姿を追いかけて巣からポーンと飛び出してしまいます。地面をよちよち移動する姿は、あぶなっかしく、思わず「拾ってきた」ということがおきるのも、この時期です。しかし、これは鳥と生まれた宿命で、この時期を生き延びてこそ、みな成鳥になっていくのです。親鳥は、補助輪付きの自転車で行動半径を拡げた人間の子供のごとく、ちゃんとヒナの動きを認識していて、ヒナの居場所に餌を運び続けます。ヒナはまだまだ小さいので、一日に何度も何度も給餌を受ける必要があるのです。さて、そんな時、ヒナの近くに人が現れると、親鳥には脅威となって子供に近づけません。親鳥は多くの場合、人が気付かない高台や、遠くの電線に退いて、様子をうかがっています。この時期、動きまわる鳥のヒナを見つけたら、すぐにその場を立ち去ることが、その鳥を助けることになるのです。この時期の保護は、「誤保護」や「誘拐」と言われるのは、このためです。どうしても気になる時には、近くの木に乗せてやり、すみやかに その場を離れましょう。(広場で子供達が遊んでいて芝地でヒナを見つけたような場合には、大人が木の上にのせてから、ヒナのいない側に子供達と移動して、遊べれば理想的です。)もちろん、怪我をしている場合、ハプニングで巣が落下した場合、交通事故やネコによる捕食の危険がある場合などは、ご連絡くださいませ。この時には、どこに巣があったか、どこで保護したのか、という正確な場所も控えてください。野生に戻すために不可欠な情報になります。野鳥一般に言えることですが、警戒心の薄い小笠原の鳥では、とくに「人が接近しても大丈夫」と思い込みがちですが、実は、人がいる のと いない のとでは、鳥の行動は大きく変わります。とくに子育てなどの繁殖時期は、信じられないほどナーバスになり、影響は生死に直結することもあります。そして、大概、人はこの変化に気づきません。近づかないで守る、ちっちゃな島で野生と共生する上で、大切なテクニックです。

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シロハラミズナギドリのラッシュです。すでに梅雨入りしている小笠原ですが、今日は梅雨の中休みとなりました。このコーナーでも書いたように、小笠原諸島内で現在確認されているシロハラミズナギドリの繁殖地は、南硫黄島のみです。今は、まさに産卵時期のはずです。そう言えば、Bonin Petrelの英名を持つこの海鳥ですが、返還前の米軍統治時代には「ウィロ(ゥ)ウィロ(ゥ)」とも、呼ばれていたそうです。響きのあるいい名前です。

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春になり、ミズナギドリ類の不時着鳥の保護が続くなか、とてもとてもレアな海鳥の保護がありました。クロウミツバメです。海鳥類は、海洋の広い範囲に生息していますが(生息分布)、繁殖地も広域な島々にまたがっている場合がふつうです(繁殖分布)。しかし、このクロウミツバメは、小笠原諸島以外での繁殖が確認されていません。海鳥では珍しい小笠原固有種なのです。この時期、小笠原諸島海域では、形態が良く似たオーストンウミツバメも観ることができますが、クロウミツバメの特徴である初列風切の羽軸の白がよく目立ちます。

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Bonin Petrelの英名を持つシロハラミズナギドリの保護が続いています。夜間活発に飛行して、光に集まる習性があるために、30以上の島々からなる小笠原諸島では、人工照明のある有人島に誘引され、不時着、激突をする事例が発生します。集団での飛来時期や、ヒナ鳥の巣立ち時期に、この傾向が強くなります。また、「カメ陽気」とも呼ばれる、春先の海にかかる濃い霧は、人工光を反射して、海鳥を、より呼び込んでしまうようです。

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2007年の南硫黄島学術調査における
シロハラミズナギドリ繁殖地の様子

春になりました。オナガミズナギドリの飛来も、いよいよ本格化してきているようです。すでに数件の不時着鳥の保護がありました。そんな中、夜に連絡あり、現場にいくとBonin Petrelの英名を持つシロハラミズナギドリでした。戦後は南硫黄島で繁殖が確認されているのみの稀少種です(群島では、繁殖地が確認されていない)。南硫黄島では、標高400m以上の森林の林床に穴を掘り、密集して大繁殖地をつくっています。飛び立つ際に、羽ばたきながら木を登り、登った先から飛び立ちます。

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