レスキュー

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今年は、小笠原諸島返還40周年です。小笠原自然文化研究所で何かをやっているわけではありませんが、とても沢山のイベントが目白押しです。昨日の盆踊り会場でメジロの巣立ち雛が届けられました。ちょっと早くに巣から落ちてしまったようです。お祭り会場の設営時に、驚いたのかもしれません。7月後半より、メジロ、オガサワラヒヨドリ、トラツグミなどの巣立ち雛の保護や、人工物への激突事例がずいぶん増えています。たしかに例年、この時期には巣立ち個体が散見されるのですが、今年は随分と目につく印象があります。驚いたことろでは、この目につく地上を徘徊している中に、ハシナガウグイスもいたことです。こんな姿を見るのは私はじめてでした。島でよく自然を観察している方からも、何度か声をかけられました。何かの要因で、この春には、沢山の子育てが行われる条件が整っていたのかもしれません。多産のあとの餌不足、そんな気がしないでもない、今年の夏です。

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海の最中に、小さく飛びさるオナガミズナギドリの姿
見えるかな?(2008/07/13の放鳥個体)

ちょこ、ちょことオナガミズナギドリの保護があります。子育てのために小笠原群島の属島各島に飛来中で、現在は抱卵真っ最中です。8月上旬にもなるとヒナが孵ります。ミズナギドリ類の多くは光に集まる習性を持っており、有人島の人工照明がこれらの海鳥を誘引してしまうこと、ネコや車のある有人島ではこの不時着や激突が命とりになることが、このコーナーでもたびたびお伝えしてきました。でも、これらのことを積極的に呼びかけはじめて5年ほど、早期回収も定着し、外灯もどんどんナトリウム灯に変わりゆき・・・・・いずれ、これらの人工灯誘引による被害は最小限度に押さえられる日も近いのでは? そう夢見ていた矢先でした。文明のシンポ? こう書くと大げさかもしれませんが、技術進歩が、あらたにこの問題を再浮上させたのです。港湾施設に新規設置された照明、あたらしい自動販売機群、みな光源が改良され、省電力化は進んでいるのでしょうが、同時に明るさは格段に強くなってきたのです。内地に戻ると、車の灯りがまぶしいことによく驚きます。ひとつひとつの照明は改善されても(その性能がどんなに進んでも)、それゆえに、あちこちに照明が増えていけば、島全体での明るさは、際限なく強く・大きくなってしまいます。地球資源にはやさしい技術(省電力による強力ライトなど)でも、それが野生動物にやさしいわけではない、ということを痛感する年になりそうです。

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青リングをつけたオガサワラノスリをみかけたら、
どうぞご一報くださいませ。

放鳥は、お昼に保護された農園にほど近い、八瀬川の河川敷で慣行しました!「ふたたび農園に行くことなかれ」と祈りつつ、念のために「放鳥後の追跡」と「出戻り確認」が出来るように「識別用の青リング」両足につけました(天然記念物なので小笠原村教育委員会に許可を得て実施)。いきなり低く飛び出すや河川敷芝地のテーブルにとまり、さらに低空飛行で、川を越えて藪の中に突っ込みました。「はたしてあんなんで大丈夫なのか?」「保護数日で太りすぎたか」「翼力がやはり低下していたか」と見守るメンバーをハラハラさせましたが夕方には、藪からいなくなっていました。(後日、島内で元気に飛んで姿が、何度も目撃されました)
今回のノスリの保護で、印象的だったことがあります。当研究所では、これまでも何度か猛禽類(オオタカ、ハチクマ、チョウゲンボウなどなど)の保護事例がありましたが、このオガサワラノスリ、まったく雰囲気が違ったのです。一言でいえば「猛禽類らしからぬ」「野生動物らしからぬ」つまり、驚くべき警戒心のなさであり、劇的な慣れのはやさだったのです。ノスリは内地のものでも、基本的に大人しいとはいえ、それは劇的だったのです(鳥に詳しい、石原先生も保護2日目にして、「ずっと前から飼っている鳥みたい!???」と驚かれたのでした)
もう、これは猛禽類ではなくて、「オガサワラオオコウモリ」や「アカガシラカラスバト」の習性(表情や反応も含めて)と、兄弟姉妹といった感覚だったのです。 あぁ、やはりオガサワラノスリも、この小笠原の、海洋島の生物なんだな、言ってみりゃ「島っこ」なんだなぁ と実感した保護事例でした。

Spcial THANKS 石原さゆり先生(NPOどうぶつたちの病院)、森本農園のみなさま、千葉由佳&勇人12THANKS 小笠原村教育委員会、小笠原支庁産業課、東京都鳥獣保護員、Yukino san&Kuu chan
※小笠原自然文化研究所は、東京都からの委託により、鳥獣保護法にもとづく傷病野生鳥獣の保護機関として、これら野生動物のレスキューを行っています。

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餌を覗き込む。
千葉さんの調査内容との照合によれば、
八瀬川流域で産まれた今年の巣立ち個体。

オガサワラノスリは石原先生に診て頂きながら、麻痺や疑われた神経症状らしきものも消えて、みるみる元気になりました。おそらくは一時的なショックによる衰弱で、順調に回復してきたところであろう判断されました。こうなると、つぎは放鳥への準備です。島にはフライングケージがありませんので、ラインフライトになります。石原先生ともご相談し、そのリスクと現在の良好な回復状況、保護してまだ数日しかたっていないことを考えるて、早期に放鳥すべし、との結論に至りました。

Spcial THANKS 石原さゆり先生(NPOどうぶつたちの病院)、森本農園のみなさま、千葉由佳&勇人
THANKS 小笠原村教育委員会、小笠原支庁産業課、東京都鳥獣保護員、Yukino san&Kuu chan、CHIKAKO
※小笠原自然文化研究所は、東京都からの委託により、鳥獣保護法にもとづく傷病野生鳥獣の保護機関として、これら野生動物のレスキューを行っています。

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保護2日目 両目がパッチリ開いて、止まり木も
しっかりつかんでいる。こう彩の色、クチバシの
色から若い個体である可能性大。

7月10日に父島知人の農家さんより連絡がありました。オガサワノスリを保護した!とのこと。数日前から、畑周辺をうろつき畑で飼われているニワトリの子供(いわゆるヒヨコ)を狙っていたようです。ところが、この畑の番人シチメンチョウに見つかって! なんと発見時には、シチメンチョウの足の下にいた模様。ヒヨコを捕獲せんと地上に降りて夢中になっているところに、タックルをくらった そんな状況が想像されます。とにかく、ペシャンコになって身動きしないノスリを当研究所に持ち帰りました。ノスリは左目が開かず、左翼や左足の脱力が心配されました。もしも、シチメンチョウに体重をかけられていたり、背部より足爪が入るなどしていれば、骨折などの内傷や感染症も心配されるところ。こうなると、いかに絶滅危惧種といえども野生動物専門の獣医さんがいない小笠原ではお手上げとなることろですが、今回は幸いにも別件の調査で長期滞在している石原先生(NPOどうぶつたちの病院)に全面的にサポートして頂くことになりました! さらに、長年、個体識別調査を実施している千葉由佳さん・勇人さんご夫妻の全面サポートも最強の布陣です。

Spcial THANKS 石原さゆり先生(NPOどうぶつたちの病院)、森本農園のみなさま、千葉由佳&勇人
THANKS 小笠原村教育委員会、小笠原支庁産業課、東京都鳥獣保護員
※小笠原自然文化研究所は、東京都からの委託により、鳥獣保護法にもとづく傷病野生鳥獣の保護機関として、これら野生動物のレスキューを行っています。