レスキュー

Picture

片翼がとれかかったシロハラミズナギドリ

3月6日、父島の集落地でネコに襲われているシロハラミズナギドリが保護され、届けられましたが、すで片翼の付け根が粉砕され脱落寸前で、傷も深く、結局、死亡しました。これまで、北之島や硫黄列島からしか、繁殖記録のない希少な海鳥です。この時期には、繁殖のために成鳥が飛来します。このコーナーでも繰り返しご紹介してきましたが、一度陸地に降りたなら、まったく動きの鈍いミズナギドリやウミツベメたちは、とくに格好の餌食になってしまいます。

Picture

保護されたクロウミツバメ(小笠原固有種)

2月21日父島西町、夜の飲食店街で落下してきたクロウミツバメが保護されました。最後は人にぶつかったとかで、人工光に惑わされ、あちこち激突した後に、フラフラ落下したようです。一晩安静にすると、十分に落ちついており、激突による身体内部の腫れも心配なさそうなので、さっそく翌日放鳥しました。いつもお世話になっている、調査船興洋(小笠原水産センター)から、この数日間、クロウミツバメとシロハラミズナギドリが父島列島の沖合で飛んでいるという情報を頂いて、いよいよ、今シーズンも始まるなぁ、と思っていた矢先のことでした。この両種は希少種で、とくにクロウミツバメに至っては、あまりにも知られていませんが、陸鳥メグロとならぶ小笠原固有種です(海鳥では唯一の固有種 RDB:DD)。火山列島で繁殖し、索餌の関係か、春先のこの時期だけ父島・母島列島沖合に出没します。しかし、5月をすぎた頃からは、母島より南へ行かないと、ほとんど見ることが出来なくなります。今なら、おが丸、はは丸から見ることが出来るかもしれません!

Picture

元気に飛び立つオナガミズナギドリ

11月20日頃より始まった、今年のオナガミズナギドリの巣立ちも、そろそろお終いのようです。島の方々のご協力により、父島では約30羽の巣立ち鳥が保護され、3羽を除いて無事に野生復帰しました。死亡の内訳は、人工建造物衝突2羽、交通事故1羽でした。昨年度よりはじめた夜間パトロールと、夜のうちに不時着鳥を保護してくれる人が増えたために、驚くほど交通事故が減りました。例年この時期には、清瀬交差点、生協前、福祉センター&三角広場付近、奥村グランドトイレ前などの路上で、哀れな交通事故死体が見られていたのですが、今年、路上で潰れているものは見ませんでした。また、早期回収はネコ害も減らしました。3羽は、まさにネコに狙われているところを保護されました。父島全体では、恐らくi-Boで把握している2〜3倍以上の不時着があったものと予想されますが、少なくとも集落地域におけるオナガミズナギドリ巣立ち鳥の人為的事故を減らせたことは、大きな成果です。なお、この期間、父島の国立天文台VERA小笠原観測局のパラボラアンテナ照明及び、小笠原ビジターセンターの外灯において、光による海鳥の誘引を防ぐために、ライトダウン等のご協力を頂きました。大感謝です。どうもありがとうございました。地味ながら、野生動物との共存とは、こんな小さな生活上の工夫や取り組みの積み重ねが必要なのではないか、と思います。
ご協力頂いた島のみなさま、まことにありがとうございました。

●回収協力:KOTARO&CHIKAKO、PAPAYA、小笠原海洋センター、小笠原水産センター、Solmar、WEST、小笠原父島漁協、さなえちゃん、YATSUKAさん、YUKINO&NORIさん、太田さん、K.WADA、キャベツビーチ、中野さん、ウォーキング中ののどなたか、横山さん、はるみさん、MOCHIKENさん、城本さん、千喜良さん、玉田さん、紀さん、ほか沢山の方々、
●チラシ掲示協力:たらふく、ふくちゃん、マルヒ、小祝商店、RAO、KAIZIN、Solmar、悠々、海遊、パパイアマート、PAPA’S、小笠原島農協、沖山酒店、ビーチコマ、小笠原島生協、小笠原父島漁協、父島分遣隊、小笠原小&中学校、小笠原警察、小笠原観光協会、OWA、東京電力、BIO、小笠原水産センター、NACS-J-O、小笠原野生生物研究会、小笠原支庁産業課

Picture

ライトアップされた壁面に激突・落下し、
脳震盪などで動けないオナガミズナギドリ

さて、今年のオナガミズナギドリの巣立ちは26日頃より今日あたりがピークだったようです。とは言え、まだ12月第1週目くらいまでは不時着は続くと思いますが。当研究所による同種の巣立ち鳥の保護は、今朝までにちょうど20羽を数えました。多くの方の発見通報や、ダンボール収容のお陰で、一昨年まで目に付いた交通事故死体(道路上)や、ネコにやられて尾がとれてしまった重傷個体などを、ほとんど見ずに来ています。これは劇的な変化です! 20羽中激突などにより重傷を負ってしまった3羽を除き、17羽が無事海へ帰りました。このうちの2羽はまさにネコに狙われている最中でした。8月から「せっせ、せっせ」と育てられたヒナ達。自然の要因での死亡は、そのまま野生で生き抜く厳しさと同義ですが、人の生活との軋轢で、命を落とす鳥たちは、1羽でも助けたいものです。

Picture

周知のためのポスター

今年も、オナガミズナギドリの巣立ちの季節となりました。昨日より父島・母島で同種の夜間不時着が相次いでいます。いずれも後頭部や腹下などに綿毛をわずかに残す、今年の巣立ち鳥です。強い白熱灯や、街灯でライトアップされている建物などにぶつかります。脳震盪をおこしている鳥も多く、そのまま放置すると、ネコや交通事故で命を落とす可能性大です。発見した方は当研究所までご連絡ください。