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さて、大型船からの放鳥は、引き波や巻き込み、船体近くの気流への吸い込みなど注意することが多く、状況管理とともに臨機応変な現場判断が重要になります。 放鳥は南硫黄島の周回の最後、船の速力が上がる前に後部甲板から、と決めました。また、鳥のパニックを防ぎ、安全な野生復帰を優先するために周知は行わず、ひっそりと実施させて頂きました。船中では布製ケージでゆったりしていたアカオネッタイチョウですが、眼前に南硫黄を見るやいなや、俄然目の色が変わり、戻る気満々の活発な動きを見せました。船から50m以上は離れた海面への着水を目指して、空中に放り出すも、強い羽ばたきでロングラン! 仲間たちが舞い飛ぶ青く明るい世界に戻っていきました。4年ぶりに開催されたクルーズは、三島三様の島々を巡る素晴らしい旅でした。本来はクルーズ専用の船に、別メニューで乗船させて頂き感謝です!!アカオネッタイチョウは途中下船なので?運賃もなし!という粋な計らいでした! この鳥の放鳥に当たっては沢山の人にお世話になりました。とても幸運な鳥でした。心より感謝申し上げます。写真は比留間美帆さん撮影の動画より切り取らせて頂きました。ありがとうございました。共勝丸、おがさわら丸、小笠原海運株式会社、硫黄3島クルーズ解説スタッフ、東京都小笠原支庁、環境省小笠原自然保護官事務所、小笠原動物協議会、Hiroyuki AOKI、Hideo Kodo、Hiroyuki Kigiku、Yumi Kusamabe、Sakiko Nakamura、Wakana Matusnami、Miho Hiruma、Kniyoshi(敬称略・順不同)

動画は小笠原自然文化研究所のFBで!!

https://www.facebook.com/profile.php?id=100076350403167

保護したアカオネッタイチョウの放鳥のタイミングに、4年ぶりに開催されるおがさわら丸による硫黄3島クルーズがありました。私も船上解説員として乗船予定がありました。保護鳥が硫黄列島産の鳥で、低気圧に誤って巻き込まれた若鳥と思われること、保護の状況から感染症の持ち込み等のリスクも小さい等から、この幸運にかけることになりました。主治医、関係機関とも相談の上、クルーズ中の放鳥を(株)小笠原海運に打診。快諾頂きました。

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父島に入港した貨物船の共勝丸から「見慣れない白い鳥がうずくまっている」と連絡がありました。強烈な西陽の当たる上部甲板の角に、ごま塩模様のアカオネッタイチョウの若鳥が!! 北硫黄、南硫黄、南鳥島のみで繁殖する小笠原でもレアな海鳥です。白い身体に赤くて長い尾が目立つ成鳥は、年に数回、父島〜母島間でも見かけることがありますが、ごま塩模様の若鳥は稀です。6月前半の太平洋では、台風やら発達した低気圧が行きすぎました。小笠原諸島でも直前の20日前後に、強風、強雨が吹き荒れており、この時の気流に巻き込まれて、父島周辺まで吹き飛ばされてしまった可能性が考えられます。海で暮らす海鳥が、船や陸地を求めるのは余程のピンチ。この若鳥も、羽毛はバサバサで、ふくらみ気味で、傾眠傾向があり、体温低下と脱水があり、保護後は、安静と保温、栄養補給に入りました。小笠原動物対処室での診察を経て、骨折等の大きな怪我がないことも確認。一週間のケアで体調は確実に上向きとなり、餌量も増えました。6月28日からは撥水回復を促し、週末には野生復帰が見えてきました。

東京港野鳥公園ネイチャーセンターで、6月15日(木)〜7月2日(日) に写真資料・ポスター展示があります。写真、絵、造形物など、盛りだくさんな海鳥展示に触れてください。また、 エクスカーション「コアジサシ観察ツアー」や、対面&オンライン講演会も開催されます。ご興味のある方は、ぜひ足をお運びくださいませ。

https://albatrossday.org/events/

なお、今年は日本の絶滅危惧海鳥類について作成したリーフレットも配布しています。

当研究所の職員も写真提供や、テキスト記述で参加しています。

https://albatrossday.org/seabirds/

2023年の1月〜3月は、オオコウモリの餌不足が深刻でした。前年の10月〜12月に、度々の豪雨と、夏日のような晴天が繰り返された結果、例年であれば、ズルズルと長期間かけて、あちこちで結実してくれるガジュマルやシマグワが、一気に同調して12月頭に大結実してしまいました。また、前年4月の台風の影響か、熟さず(果肉を発達させないままに)落ちてしまうモモタマナも多く、特に母島では、年末年始に深刻な餌不足に突入し、農園での柑橘の葉食害が顕在化したのです。被害を防ぐために私も母島に通い、農家さん、農業関係者とともに夜のパトロールを続ける日々が続きました。そして、この写真です。これこそが待ちに待っていたビロウの花。この花がくれば、オオコウモリたちは花を求めて山に属島に戻ってゆくのです。小笠原では栽培種として導入されたビロウと、固有のメイジマビロウ、オガサワラビロウが自生していますが、3月下旬から、その順番通りに、次々と開花が始まり、嘘のようにオオコウモリの畑への飛来が止まったのです。春から初夏は、自生種の開花の季節です。サイザルアサ、モモタマナ、アレカヤシ、ヒメツバキ、タコノキ、テリハボク(タマナ)、リュウゼツランなどなど、次から次と花が続きます。導入されたヤシ科の花も花盛りです。これらの花のバトンが尽きる7月下旬までは、オオコウモリの食害を少し忘れて、ホッと出来る季節なのです。