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「箱から出すと、いきなり飛んだ!」

台風前の9月25日、悪天候の中、オナガミズナギドリの不時着個体が持ち込まれました。電線か建物にぶつかって脳しんとう状態のところを、ネコに襲われて血だらけでした。幸い大きな傷・怪我もなかったので、少々栄養を与えて、一晩安静にしました。台風接近前なので子育ての時期でなければもうしばらく安静にするところですが、まさにこの時期は食欲旺盛なヒナが待っているので翌朝放鳥しました。

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青灯台にて

保護場所から飛び立ちながら、保護場所へ戻らなくなりはじめました。9月24日の昼前に父島大村海岸の青灯台付近で疲れて休んでいるところを発見。海で遊んでいた島のチビッコたちの上を何度も飛びながら、どたばたと陸に降りたようです。おそらくエサもうまく捕れずに、疲れたのでしょう。眼窩が落ち込み、力のない目に、チビッコたちはおじいちゃん鳥と思ったようです。この日はこのまま保護。ムロアジ2本を飲むと爆睡しました。
翌24日は、朝飛び立って発見は15時過ぎのこと。同じ青灯台付近でミズン(イワシ)釣りの人に交じって、しかも、釣ったイワシまでちゃっかり頂いていました。
25日は朝から天気が悪く接近する台風の雲の先発隊がかかりはじめて断続的な強い雨の繰り返し。ガーコは一日飛ばずにいました。
そして問題の26日、早朝に飛び去ったガーコは8:30すぎに二見湾内で確認され、その後、姿が見えなくなりました。強い台風が近づいていました。本格的な離陸が近づいているとはいえ、大きく天気が崩れだしたタイミングの悪さに、島内を探しましたが終日どこにも姿はありませんでした。

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成長したガーコの姿

ミズナギドリやアホウドリ達は、自分より大きく育ったヒナを残して、ある日突然に繁殖地を去ってしまいます。ヒナは、完全に取り残されて、充分に蓄えられた皮下脂肪を消費しながら、巣立ちの時期をひとりで迎えます。カツオドリは、少しちがって初飛行後も、しばらくの間は、親鳥から餌をもらっているようです。しかし、陸鳥のようにずっと親鳥の跡をついてまわり餌の捕り方を習うということはありません。写真は、すっかりスリムになり、成鳥と見間違うほど立派になったガーコ。しかし、初心者マークのごとく、まだお腹だけは茶褐色です。おぼつかない試運転飛行中、どこかに激突したのか?額と後頭部に怪我をして、すっかり毛がないところが見られます。

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ガーコ(9/20撮影)

9月18日以降、ふいにどこかに飛び去り、夕方までに保護場所付近に戻るパターンが数日続きました。写真は初フライトから3日目の9月20日。飛行を終えて戻ってきたが、失敗して近くの草むらに突っ込んだところです。今、父島列島で最大のカツオドリの繁殖地南島でも、もっとも早いヒナが、ほぼ同じ成長具合で、危なっかしくも果敢に、飛び始めているものも見られるようになりました。大型の海鳥は、生存率が高く、寿命も長い(十数年〜数十年)ものが多いのですが、もっとも命を落とす危険が高い時期は、初飛行から一人前になるまでの間と考えられています。ガーコもいよいよ本格復帰へのトライ&エラーが始まりました。

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飛び始めたガーコ

脱走が、本格的な飛行訓練に変わりました。はじめて数時間に渡り姿が見えなくなったのは9月18日でした。この時は、お昼から行方不明になって、夕方に保護場所より数百メートル離れた場所で発見されたのでヨチヨチ歩きの脱走かと考えました。しかし、二見湾内黒岩での目撃例もあって、これが初フライトであることがわかりました。真っ白い綿毛に、風切のみが黒い姿で保護されてから約40日のことでした。この日から、右足に自然文化研究所の連絡先を記したテープ標識をつけました。